佐賀大学生が「高気密・高断熱の家」について勉強に来られました
こんにちは、アップルの野田です。
先日、佐賀大学の教授に依頼され「高気密・高断熱の家を建てるとどんなことがあるのか」、について佐賀大学生に講演させていただきました。
モデルハウスにお越しいただき、約1時間程モデルハウスの見学・講演という内容です。
どうやら課外学習の一環として、衣食住の「住」という項目があったらしく、ありがたいことに弊社が抜擢されました。
佐賀では、高気密・高断熱の家を建てているところはありますが、なんちゃって高気密・高断熱住宅が増えています。
今回は、高気密・高断熱のメリットやなんちゃってを見抜く方法などをお話ししました。
その講演内容について少し紹介したいと思います。
高気密・高断熱の家を建てるとどんなことが起こるのか
まずは、日本の住宅の現状について。
①日本の住宅の寿命
上記のグラフをご覧ください。
これは、滅失住宅の平均築年数の国際比較をグラフ化したものです。
グラフを見ると、日本は他の先進国に比べ住宅の寿命が短いことが分かります。
それに比べて、アメリカは日本の約2倍・イギリスは約2.5倍と住宅の寿命が長いです。
日本は素晴らしい技術を持っていますが、住宅の断熱・気密などに関してはレベルがかなり低いと言えます。
これには、日本の断熱・気密性能の低さ、結露などが関係してきます。
➁先進国で日本の住宅は認められているか
世界の基準で見てみると、残念ながら日本のほとんどの住宅は認められていません。
左図をご覧ください。
イギリスでは、冬季の室内温度指針が定められていて、18℃未満の住宅は建ててはならないと法律で定められています。
18度未満の家は、「健康にも悪く・家と認められない」という厳しい規制が設けられていて、国が管轄して国民を守っています。
また、ドイツでは室温19℃以下は「基本的人権」を損なうと考えられていて、国レベルで住宅への考え方が違うことが分かります。
国が住宅を管轄して、保護しているので寿命の長い家がそこら中に建っているのです。
左図は、寒さによる疫病や死亡リスクをまとめたイラストです。
このように、昔の家のような寒い住宅で暮らすと心筋梗塞や脳卒中などリスクが高まります。
しかし、イギリスやアメリカ、ドイツなどのように暖かい住宅で暮らすことで、これらのリスクを大幅に軽減することが出来るのです。
暖かい家に暮らすことは、贅沢と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、健康の話なのでこれからの医療費や元気に暮らせるかなどに大きく関わってきます。
国の方針は高気密・高断熱化⁉
高気密・高断熱住宅の特徴とは?
・省エネルギーで、冬は暖かく夏は涼しいから快適
・部屋同士の温度差が少なく、ヒートショックが起きにくい
・防音効果が高い
・結露やコールドドラフト現象が起きにくい
・疾病割合が下がる
・ダニやカビが発生しにくい
・塵埃・花粉が侵入しにくい
などです。
上記で紹介したような、健康・住宅の寿命・省エネなどの観点から、今日本の方針は高気密・高断熱化の動きが進んでいます。
イギリスのように、「18度以下の家は建ててはならない」となるとほとんどの住宅がアウトなので、少しずつレベルを上げていくという動きです。
次に、光熱費。
これから電気代が上がっていくと言われています。
現在電気代が、1万5000円だったとしたら2万・3万と電気代が上がっていくことが予想されます。
そのようなことから、国も現状の電気代を1万・5000円と減らしていくことで、電気代の値上がりによる負担を抑制しつつ、高気密・高断熱住宅の普及を進める方針です。
高気密・高断熱の住宅を手に入れると、健康・アレルギーなどの改善・結露リスクが下がる・光熱費が削減されるなどが期待されます。
入浴中に亡くなる方は交通事故の4.9倍
家庭内事故で亡くなる方のほとんどが、ヒートショックによるものだと言われています。
ヒートショックとは、住宅内の温度差によって血圧が上がり、脈拍が早くなったり、心臓に負担がかかることを言い、場合によっては、脳卒中や心筋梗塞を引き起こし亡くなってしまうことも…
下記のグラフをご覧ください。
このグラフは、2016年度の交通事故による死者数とヒートショックにより亡くなった方(入浴中)を比較したものです。
2016年に交通事故で亡くなった方は3904人。
入浴中にヒートショックが原因で亡くなる方は、推定1万9000人。
このグラフから、入浴中にヒートショックのより亡くなる方は、交通事故で亡くなった方の約4.9倍ということが分かります。
3年前のデータでは、約3.8倍だったので現在は、6.7.8倍くらいに増えているかもしれません。
ただ、これはあくまで入浴中にヒートショックで亡くなった方のデータで、実際は寝室・トイレ・脱衣所なども含まれるので、もっと多くの方がヒートショックで亡くなっているのが現状です。
近畿大学建築学部長の岩前教授によると、冬場の低温の影響で12万人がなくなっているともおっしゃっています。
こんなに多くの方が無くなっているのにもかかわらず、軽視されているのが現状です。
住む家にも気を付けなければならないということが、はっきりとデータでも分かります。
高気密・高断熱のメリット
健康状態の改善
これは1万257人の方を対象に、既存住宅から省エネルギー基準(断熱等級4)を満たす住宅に住み替えた居住者の各種疾病にかかっている人の割合が改善されたことを示したグラフです。
病気が必ず治るというわけではありませんが、性能が良い家に住み替えることで改善の傾向がみられています。
このようなデータからも、性能の良い家に住むことによって健康に良いということが分かります。
性能のいい家の見分け方
国の地球温暖化対策
日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」に挑戦し、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。
ですが、実現するには問題が山積みです。
現在は、2025年に省エネ基準適合義務化が延期され、石炭火力に依存しているのが現状。
2030年には、ZEH住宅の義務化を目指し、今後より高い省エネ性能が求められる可能性があります。
省エネ性能の高い住宅を義務化することで、自家消費エネルギーを減らし脱炭素化を目指します。
性能を確認するためには?
高断熱性能は「Ua値」で確認!
「Ua値」は住まいの保温性能を示す目安、熱の逃げにくさを表していて、0に近いほど性能が良いと言えます。
どこの住宅会社に行っても「弊社は高断熱です」と言います。
高断熱の基準は明確に定められていないので、「弊社は低断熱です」と説明される会社はいません。
なので、最近はなんちゃって高断熱が増えています。
そこで、断熱性能を判断する基準として「Ua値」というものに注目します。
これは、断熱基準ごとの「Ua値」を表にまとめたものです。
断熱基準は、地域区分によって求められる断熱性能が異なります。
1地域である北海道が6地域である佐賀と同じ最低基準では寒すぎるので、計7地域と区分が分けられています。
表でいえば佐賀は6地域で赤い部分に当たりますので、2025年からの最低基準は「Ua値0.87」です。
「Ua値」は低い程断熱性能が良いので、最高等級はHERT20 G3(断熱等級でいうと断熱等級7)「Ua値0.26」以下が最高等級になります。
しかし、最高等級ともなると体感的にはあまり変わらない、コストが掛かりすぎることもあり、HERT20 G2(断熱等級6)「Ua値0.46」レベルを推奨、最低HERT20 G1(断熱等級5)「Ua値0.56」以下を強くお勧めいたします。
是非住宅会社を訪ねた時に「Ua値は平均いくつですか」と聞いてみてください。
その際に、「Ua値0.6」以上の数値が出てきた場合は、断熱に気を使っていない住宅会社と思っていただいて構いません。
省エネ住宅の基準① ZEHとは?
ZEHとは、断熱・省エネ・創エネで住宅の年間エネルギー消費量をおおむねゼロにする住宅のことを指します。
「Ua値」で表すと、0.6以下がZEH住宅です。
ZEH住宅は、国からの補助金も出ていて、2024年度の補助金「子育てエコホーム」では80万円の補助がおります。
それだけ国も省エネ性能の高い住宅の普及に、本気で取り組んでいるということです。
省エネ住宅の基準➁ HERT20とは?
「HERT20」とは、Ua値基準ではなく、エネルギー削減目標や目指す室温レベルを提言している法人です。
「HERT20」には、G1、G2、G3という基準があり、国も断熱性能を知る基準として採用しています。
表を見ていただければわかる通り、HERT20 G1=Ua値0.56、HERT20 G2=Ua値0.46 HERT20 G3=Ua値0.26となります。
Ua値と合わせて覚えると、より分かりやすいです。
Ua値だけでは計れない(施工精度)
ここまで、高断熱性能は「Ua値」や「HERT20」といった断熱の基準についてお話ししました。
しかし、Ua値(断熱性能)は完璧に施工された状態を想定し数値化されたものです。
つまりUa値は数値では計ることが出来ない、施工精度も重要になってきます。
これは、グラスウールの施工についてのイラストです。
グラスウールは、隙間なくしっかり施工することが難しいので、一例として紹介します。
グラスウールの完璧な施工が熱貫流率0.314だとすると、施工精度が下がるごとに熱貫流率も悪くなっていることが分かります。
Ua値は、あくまで施工が完璧な状態の数値を表しているので、施工精度が良くなければ数値通りの断熱性能を発揮することが出来ません。
このことは、どの断熱材にも言えることなので、どの断熱材を何ミリ使ってきれいに施工できるかが重要です。
高気密性能は「C値」で確認!
「C値」(相当隙間面積)は気密性能を表す値で、ゼロに近い程家全体の隙間が少なく気密性能が高いと言えます。
「C値」は、住宅ごとの実測でしか測定することが出来ないので、必ず「気密測定」が必要です。
「うちは高気密住宅を建てています」と言っていても、測定しなければわからない数値なので、過去何件かの気密測定のデータを見せてもらい、施工精度を確認しましょう。
気密性能は必ず「C値1以下」で、劣化のことも考えると「C値0.5以下」を推奨します。
換気について
「気密」と「換気」は密接に関係しています。
このグラフは、気密性能(C値)の数値ごとの給気口からの給気量の割合を表したものです。
新築を建てる際に、換気計算というものを行います。
建築基準法では、シックハウス症候群対策などのため、2時間に1回部屋の空気が入れ替わる換気数といった基準が定められているためです。
グラフに書いてある、給気口からの給気量の割合が50%以上で設計通りの換気が行われます。
つまり、C値1以下が基準通り換気が機能した(建築基準を満たす)住宅になります。
低気密住宅では、換気計画どおりに換気できていないためシックハウスなどに注意が必要です。
C値(気密性能)が大事な理由
C値の違いによって、実際の断熱性能(実質Ua値)は異なります。
この表は、C値によって実際の断熱性能が変わることを表したものです。
気密処理をしていないC値5の住宅の場合、計算上Ua値0.46(断熱等級6)だったとしても、実際のUa値は0.71になりZEH住宅でもなくなります。
このように、気密性能が高くないと、せっかくの断熱も真価を発揮しません。
このようなことから、高気密・高断熱はセットで考えるべきだということを覚えておきましょう。
以上講演の内容でした。
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